てんせいじんごっこ.blog

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九十九里のヘッドランドが抱える問題

南北を囲う海食崖によって養われて来た九十九里浜。その緩やかな弧を描く砂浜の汀線は、北側の屏風ヶ浦と南にある太東崎が荒波に削られ、そこで生まれた砂が沿岸流に乗って運ばれ形成されて来た。しかし、この南北の海食崖に護岸が築かれ、更には飯岡漁港・太東漁港・片貝漁港が海上に突き出し漂砂を堰き止めてしまい、砂の供給源を絶たれた現在の九十九里浜は、深刻な海岸侵食の危機にさらされている。

海岸侵食による著しい砂浜の後退は、2020年の東京オリンピックでサーフィンの試合が行われる千葉県長生郡一宮町でも起こっています。一宮では10基のヘッドランドと呼ばれるT字型の堤防で砂の流出を防ごうとしていますが、美しい九十九里の景観が人工物によって壊され、更にはヘッドランドの建設でサーフィンに適した波が減少したことも重なり、県が進めるヘッドランドを用いた海岸保全事業とその機能自体に疑問を抱いたサーファー達が結束し署名活動を行い、サーフィン・漁業・観光業・海岸保全に携わる地域住民などの他に専門家らを交えた「一宮の魅力ある海岸づくり会議」が発足しました。その話し合いの中、この会が発足する原因となった「サンライズ」と呼ばれるサーフポイントにある6号ヘッドランドの拡張工事に関して、様々な意見が交わされています。

HL6.jpg

計画当初は6号ヘッドランドの先端に200メートルの横堤を造る予定でしたが、隣接する5号・7号ヘッドランドを同じ規模の構造にすると、サーフィンに適した波が立たなくなってしまいます。特に7号ヘッドランドの場合は6号との間隔が狭く、サーフィンが全くできない状態になってしまいます。現在この計画は一旦中止となり、今後どのような形状が望ましいのかが話し合われています。

会議では、現在6号ヘッドランドの先端部とテトラポッドの間に隙間があり複雑な流れが生じて危険なことから、先端部を丸くする・尖らせる・潜らせる・現行継続といった4つの提案がなされ、その内、先端を尖らせる案は意味が無いので却下。丸くする案は費用の面から実現は不可能。潜らせる案はシミュレーションの結果、現行法と同等の効果が得られると分かりましたが、結局は現行法のまま90メートルの幅で工事を行い暫らく様子を見ることで決着しました。

タンカー

現行

潜堤

潜堤2

出典:資料3 6号ヘッドランドについて.pdf

これらの案は、ヘッドランド先端にある横堤部分で強い離岸流が発生する問題を解消しよと考えられたもので、離岸流を向岸流で相殺させるアイデアです。沿岸に打ち寄せる波が高くなると、ヘッドランドの先端部周辺に発生する離岸流も強くなります。しかしヘッドランドの内側は波が穏やかで水深も浅く子供でも簡単に近づくことができ、そこに危険が潜んでいます。

headland 4

この画像は一宮の2号ヘッドランド横堤部分。ここでサーフィンをすると分かるのですが、黄色く塗られた場所は非常に浅くなっています。ところが、点線で示した辺りから急激に深くなっていて、その先には強い離岸流が発生しています。茨城県の鹿島灘では毎年、このヘッドランドの先端部周辺で複数の犠牲者が出ています。先ず急激に深くなっている所で溺れかけ、慌てて泳いで戻ろうとしても、離岸流に乗って沖へ流されてしまう。海上保安庁ではこの状況を「ヘッドランドの魔性性」と呼び注意を促しています。

そもそも子供達が集う海水浴場のすぐ近くに、このように危険な工作物が存在すること自体が問題ではないでしょうか。ヘッドランドを用いた侵食対策は国土保全のためであり、それは地域住民が安心して暮らせる環境を整える目的で行われています。そのために造られたヘッドランドが水難事故の発生源であるなら、そこには矛盾が生じてしまいます。ヘッドランドの建設費用には限りがあり、安価に効果を生むために、このような配慮にかけた欠陥が残されているのです。

ヘッドランドの先端に横堤を築くのには、2つの理由があります。1つは縦堤先端部が台風などの接近による波浪で崩れるのを防ぐため。もう1つは、横堤後方にトンボロを形成し、後退した砂浜の汀線を前進させるためです。ところが、九十九里の場合この方法は適切でないことが研究者の調査によって分かって来ました。

「一宮の魅力ある海岸づくり会議」に参加している海洋土木工学の専門家である宇多高明氏は、2015年に「侵食対策としてのヘッドランドの効用と限界」という論文を発表しています。その中から抜粋すると、

九十九里浜のように海浜砂が粒径0.2 mm程度の細砂により構成された海浜では,HLを波による地形変化の限界水深hc(わが国の外海・外洋に面した海岸ではほぼ10 m程度)より深い場所まで伸ばすことは,建設に多大なコストを要すること,またHL自体が大きな波の遮蔽域を形成して周辺海浜へ大きな影響を及ぼすことなどから実際問題不可能と考えられる.その場合,HLの先端水深をhoとすると,砂移動はhc以浅の水深帯で起きているので,ho~hc間ではHLの先端を沿岸漂砂が回り込んで下手海岸へと流出し,HL上手側の海浜に堆積している砂量は減少せざるを得ない.HLは沿岸漂砂の阻止を目的に造る以上,このことはHLの効用が失われることを意味する.

HLによる沿岸漂砂の低減効果は縦堤が長いほど高くなる.一方,横堤による沿岸漂砂の阻止効果は縦堤の場合より小さい.さらに横堤を伸ばしても時間とともに阻止効果は低下し,HL沖の通過沿岸漂砂量は時間とともに増大するという結果となる.

HLを造っても究極的には海浜の維持はできず,ただ侵食速度を遅くする効果しか期待できないことになる.これはHL工法を現場に最初に導入する際になされた「安定海浜の創出」の説明と矛盾する結果をもたらす.

細砂海岸において侵食が起きた場合,侵食対策としてHLを伸ばしても結局のところ長期的に見れば細砂の流出が続くので,侵食対策としてのHLは時間とともにその効用が低減する.これは単にHLだけでなく離岸堤などの施設においても同じ結果となる.細砂海浜の維持のためには,各種施設を造ってもあまり効果的でなく,流出砂量に匹敵する量の砂を半永久的に投入する以外方法がないことになる.これは細砂海浜で行われてきた侵食対策では究極的には養浜を永遠に続けない限り海岸保全ができないことを意味する.


出典:侵食対策としてのヘッドランドの効用と限界.pdf

と述べられています。要するに、「九十九里浜や一宮の場合、ヘッドランドで海岸侵食を防ぐことはできない」ということです。T字型のヘッドランドを構築した場合、その後方に伸びたトンボロがヘッドランド先端の水深を浅くしてしまい、砂の流出が発生してしまう訳です。画像の点線で示した急激に深くなっている部分は、その現象によって形作られたものなんですね。だとすれば、陸上と海上から砂を運び入れるサンドバイパス以外に、どのような方法で海岸侵食を防げば良いのでしょう。

構造物で侵食対策を行う場合ヘッドランドの他に離岸堤や人工リーフを使いますが、一宮は当初、離岸堤を用いて侵食対策を行う予定でした。ところがこの案は猛反対を喰らい、ヘッドランド工法に切り替えた経緯があります。そのため、一宮の2号堤脇には離岸堤が1基だけ残されています。一宮の隣いすみ市の日在浦では一足先に離岸堤で侵食対策を行いましたが、これによって嘗て「ドカリ」と呼ばれたチューブを巻く波が失われ、今では限られた僅かな場所でしかサーフィンができません。一宮では週末ともなれば県外から沢山のサーファーが訪れ、サーフィンを目的とした移住者も増え続けています。それに対して日在浦では、週末でもサーファーの姿はまばら。海水浴客も年々減少傾向にあり、経済的な恩恵に全くあやかれていません。

なにより、このテトラポッドで造られた離岸堤は美しくありません。近年、世界遺産に登録された場所や観光地では、このテトラポッドの離岸堤が撤去されています。ところが、この駄目だらけの離岸堤には優れた侵食防止効果があるようなのです。

日在浦2

この画像は、台風による高潮と高波によって海岸の砂が侵食された日在浦の様子と、その後の様子。これ以前は砂の下に埋もれていたテトラポッドが全く見えない状態でしたが、一夜にして無残な姿になりました。しかし2年の歳月を経て、海岸の砂浜がここまで回復しています。この間、日在浦では砂を運び入れる養浜など全く行われていません。日在浦は自然の力だけで、ここまで回復できたのです。これと同じような現象が一宮で起こっていないとなれば、この問題は重大でしょう。縦に伸びたヘッドランドは、海岸が本来持っている沿岸流と漂砂による柔軟な回復力を阻害するだけでなく、堆積した砂を沖へ排出し続ける永久機関となる訳です。

だとすれば考えられる選択肢は2つ。ヘッドランドを全て撤去して元の状態に戻しサンドバイパスだけで侵食対策を行うか、テトラポッドの醜い離岸堤の代わりに潜堤方式の人工リーフを利用する方法です。しかし一般的な人工リーフの形状は長方形のものが大半で、この形状ではサーフィンに適した波が立たなくなってしまいます。そこで注目したいのが、近年研究が進む三角形状の人工リーフです。

主にデルタ型リーフと呼ばれるこの潜堤は、線で波の威力を減退させる従来の離岸堤に対して、面で波を砕く方式が採用されています。このデルタ型リーフの上で波が砕けると、サーフィンに適したAフレームの波が形成されます。また、海岸侵食を防ぐ離岸堤としての機能や津波の威力を減退させる機能の他、魚礁としての役割も兼ね備えています。

デルタ型リーフは従来の離岸堤に対して費用の面で問題が発生するかも知れませんが、このデルタ型潜堤でアウターリーフを構築した侵食対策によってサンドバイパスに費やす資金を軽減できるのであれば、長期的な目で見た侵食対策に掛かる費用を安く抑えることができるかも知れません。

ベイブリッジやレインボーブリッジは単なる公共物ですが、夜に光り輝くことによって人々を魅了する都市を作れ、私たちの生活を豊かな気持ちにしてくれます。侵食対策に使われる構造物にも、ほんの少しの装飾を加えることによって、大きな経済効果を生み出すことができるでしょう。サーファーは沖の人工リーフで波と戯れ、波の穏やかな内側の海岸で海水浴客が安らぐ。そんな住み分けが1つのビーチで達成できるのであれば、多くのものが得られるでしょう。サーフィンを楽しむ人達を目の当たりにした海水浴客が、自分も波に乗ってみたいと思う。足繁く海に通うようになり、そこに暮らしたいと考え始める。そんな環境を実現できるのは、関東では千葉県だけだと思います。2020年のオリンピックでサーフィンの試合が行われる千葉県にとって、九十九里浜の海岸侵食対策をどのような形で成功させたのかは、世界中が注目するニュースになるでしょう。そのためにも無粋で無骨な構造物による侵食対策ではなく、九十九里の景観を破壊しない侵食対策が必要なのです。

spiral jetty 02

【参考資料】
一宮の魅力ある海岸づくりについて
サ ー フ ィ ンに適するデルタ型リー フ周辺の波浪特性.pdf
クレセント型潜堤およびデルタ型リー フによるサーフィン共存のための波浪制御.pdf
デルタ型潜堤による津波の減災効果に関する実験的研究.pdf
三角形潜堤周辺の砕波を伴う波・流れの非線形数値計算.pdf
天端面に傾斜を設けた人工リーフ(多目的人工リーフ)による砕波と波浪制御に関する研究.pdf
多目的人工リーフ周辺の海浜地形変化の特性に関する研究.pdf
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一宮の海岸侵食を防ぐ養浜計画について

2020年の東京オリンピックでサーフィンが正式種目に選ばれ、その試合会場に千葉県の一宮町(いちのみやまち)が選ばれました。しかし、全長66Kmに及ぶ九十九里浜の南に在る一宮の海岸は、深刻な海岸侵食の問題を抱えています。五輪試合会場の志田下(釣ヶ崎海岸)や、世界大会が行われた東浪見も浸蝕の被害を受けており、このまま侵食対策を施さなければ砂浜が失われてしまう事態に陥っています。一宮ではヘッドランドと呼ばれる縦と横の堤防が連結するT字型の構造物で砂の流出を食い止め今以上の海岸侵食を防ごうとしていますが、その構造と機能に加え、九十九里浜の景観が損なわれる問題が地域住民の間で持ち上がっているようです。

headland 1

このような諸問題から一宮では、町長と職員や技術者の他に、漁業関係・サーフィン関係・海水浴場関係などの人々を交えた「一宮の魅力ある海岸づくり会議」と題する話し合いの場が設けられ論議が交わされています。この会議での主な議題は海岸侵食対策に関するものが大半なのは当然ですが、T字型堤防のヘッドランドと、海岸に砂を直接搬入するサンドバイパスによる養浜に話題が集中しています。

九十九里の砂浜は主に、海食崖である北側の屏風ヶ浦と南側の太東崎が侵食されてできた砂が沿岸流に乗って漂砂となり運ばれることで形成されて来たと考えられています。しかし現在は海食崖の崩落を防ぐ護岸が築かれ、更に飯岡漁港・太東漁港・片貝漁港が海に突き出し漂砂を堰き止めてしまい、九十九里の大規模な海岸侵食が始まりました。

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ヘッドランドは残された海岸の砂が流出するのを防ぐために造られたものですが、このヘッドランドだけでは海岸の侵食を完全に食い止めることができず、砂を海岸に運び入れる養浜も合わせて行わなければいけないそうです。また、目の細かすぎる砂は波にさらわれ流れ出てしまう他に、ハマグリやナガラミといった貝類の生息にも悪影響を与えるため、その材質にも配慮する必要があるそうです。また、アカウミガメの産卵に必要なハマヒルガオが自生する条件も整えなければならず、それらの条件を全て満たす侵食対策は、困難の連続といった状況のようです。

ヘッドランドは1基建設するだけでは海岸侵食を防ぐ効果が乏しく、侵食が著しい箇所に複数設置する必要があります。この「ヘッドランド」という名前は日本語で「岬」を意味し、縦と横の堤防が連結するT字型のヘッドランドは別名「人工岬」とも呼ばれています。ヘッドランドを2基並べた場合、その間にはポケットビーチが形成されます。つまり、人工岬で囲われた人工の入江、「人工湾」を造ることで砂の流出を防いでいます。しかし、この人工岬で囲われた人工湾には、構造上の欠陥が残されています。

headland 2

上の画像のように2号・3号堤に囲われた一宮海水浴場の中央には、新たに少突堤が築かれました。これは人工湾中央の侵食を緩和させる案として設置されたもので、この少突堤に砂を定着させようとする試みです。そこで、この人工岬で囲われた一宮海水浴場と、天然の岬で囲われた千葉県勝浦市にある守谷海水浴場とを比較してみましょう。

headland 3

ご覧のように、守谷海水浴場の中央は深くえぐれ、弧を描く汀線の砂浜が形成されています。それに対し一宮海水浴場の汀線は直線的であり、それ故、湾内中央の砂浜が深く侵食してしまうのです。この現象は研究者たちにも広く知られる事実であって、一宮海水浴場の砂浜は自然の力によって在るべき姿を形成しようとしている訳なのです。

そうであれば、夏に海の家が建つスペースや駐車場をセットバックさせ一宮海水浴場の砂浜が弧を描くように修正すれば、人工湾中央の海岸侵食は急速に弱まり、養浜に使われる砂を運ぶサンドバイパスの費用も大幅に削減できるはずです。ところが、侵食対策を行っている海側と、その背後にある砂防林とでは管轄する省庁が別々なため、いわゆる縦割り行政による柔軟な対応ができない状態になっているのです。これは各漁港や河川にも同じ問題があり、海岸侵食対策の速度を遅らせる原因にもなっているのです。しかし、これらの諸問題を行政側も理解しており、海岸侵食対策は新たな展開を見せようと動き出しています。

現在、一宮町が取り組んだ「一宮の魅力ある海岸づくり会議」は、九十九里浜に接する各市町村を含んだ「九十九里浜侵食対策検討会議」に発展しています。これらの取り組みが新たな侵食対策の方法を生み出す可能性もあり、目が離せません。なによりも、こうした話し合いには様々な知識と経験を持つ人々が集う必要性が高く、ヘッドランド工法による侵食対策を行っている研究者や技術者も、それを望んでいるのです。

一宮町のヘッドランドの大半はほぼ完成形に至っていますが、オリンピックの試合会場である志田下にある堤防は、まだ未完成のままです。ここにある堤防がどのような形になるのかは、いまだ未定のままですが、完成した堤防に嘆くのか喜ぶのかは、そこに携わる私たち一人一人に掛かっているといえるでしょう。ここはひとつ、志田下でサーフィンをするローカルもビジターも、この会議に参加してみてはどうでしょうか。

さて次回は、「一宮の魅力ある海岸づくり会議」にて交わされた、ヘッドランドの構造に関する話題を中心に、その可能性を考えてみようと思っています。興味のある方は是非ご覧になって下さい。

【参考資料】
一宮町 一宮の魅力ある海岸づくりについて
千葉県 第1回九十九里浜侵食対策検討会議
千葉県 南九十九里浜養浜計画
南九十九里浜一宮海岸のヘッドランド周辺の地形特性 pdf

九十九里浜の海岸侵食に関して

2020年の東京オリンピックでサーフィンが正式種目に選ばれ、その試合会場は千葉県の一宮町に決定しましたが、この一宮町を含む千葉県の九十九里浜一帯は、大規模な海岸侵食の問題を抱えています。

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※画像はイメージ

この海岸侵食による砂浜の後退が起こった原因は、九十九里の北側にある屏風ヶ浦と南側にある太東崎などの海食崖が崩れるのを防ぐために投入された帯状の消波ブロック。つまり、テトラポッドのこと。この護岸工事によって崖が崩れなくなり、砂の供給源が絶たれたのが九十九里侵食の主たる原因とされ、その他に砂防ダムや川岸の整備などで、河川からの土砂が海岸に流れ込まなくなったのも侵食の原因だと考えられます。

また、太東漁港・飯岡漁港・片貝漁港などの拡張工事による漂砂への影響も大きく、九十九里浜の侵食は瀕死の重体と例えられるほどの深刻な状態になっているようです。そうであれば、病の根幹である屏風ヶ浦と太東崎のテトラポッドを撤去し、元の姿に戻せばいいと思うのですが、この問題は、そう簡単には解決できない障害があるようです。

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帯状のテトラポッドが並ぶ屏風ヶ浦の光景

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太東漁港の南側にある砂浜は漁港拡張工事の副産物で嘗ては存在しなかった海岸

屏風ヶ浦と太東崎の海食崖崩落を守るテトラポッドの護岸は、地域住民や千葉県が国に申請して行った事業であり、国土保全の観点からして、テトラポッドを簡単に撤去することができないのです。当時の知識と技術では、今日起こっている大規模な海岸侵食を予見できず、このような事態に陥ってしまったのですが、仮に、このテトラポッドを撤去して元の姿に戻すとなれば、その費用は千葉県が負担し、護岸工事に掛かった国費も返納しなければならない可能性もある訳です。

東洋のドーバーと謳われる屏風ヶ浦の海食崖。しかし、ご当地イギリスのケント州にあるドーバー海峡に面した白亜の崖は、自然の状態のまま放置されています。欧米では国立公園に属する地域には人間の手を加えないのが基本原則であって、そのような観点からして日本は環境後進国といえます。

しかし今回のような事態を招いたのは行政の失態ではなく、我々国民が自ら行った過ちだといえるでしょう。このような環境破壊が起これば、地方議員や国会議員、自治体や行政のあり方を私たちは安易に批判したがります。ですが、この屏風ヶ浦や太東崎の護岸工事に端を発する九十九里の海岸侵食は、私たち国民が願って行ったことによる失態なのです。

古来より自然信仰が定着していた私たち日本人は、どこで道を誤ったのでしょう。九十九里に発生している深刻な海岸侵食に例えられる現象は、日本各地に起こっています。ぐるっと海に囲われた海洋国日本。そこに住まう私たちは、今一度その考えを改め、情報を共有する必要性に追われていると考えます。

また、最後にひとつ付け加えておきますが、海岸侵食などの環境問題の話をすると必ず、地球温暖化による海面上昇を取り上げる方が多々居ります。しかしそれは年に数ミリ単位の観測結果しか出ておらず、今日起こっている海岸侵食には、直接的な影響を与えていません。マスメディアから得た情報を安易に鵜呑みにするのではなく、正確な情報を収集し共有することを肝に銘じていただきたく願います。

さて、次回は九十九里の海岸侵食を防ぐT字型堤防のヘッドランドに関して記す予定ですので、興味のある方は、そちらも続けてご拝読下さい。
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