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TBS 日曜劇場 『とんび』 がイマイチ駄目な件について

tbs_tonbi.jpg
http://www.tbs.co.jp/TONBI/

原作     重松清
脚本     森下佳子
演出     平川雄一郎 ほか
プロデューサー 石丸彰彦
出演     内野聖陽・佐藤健・吹石一恵・常盤貴子・麻生祐未・柄本明 ほか

※ このブログは、第2話終了後に書かれたものです。

 脚本・演出・プロデュースの3名からして、このドラマは村上もとかの漫画をドラマ化した『JIN-仁-』の制作チームで作られていると思われる。『JIN-仁-』は数多くの賞を獲得したドラマであり、演出の平川雄一郎氏は綾瀬はるかの代表作とも言えるTVドラマ版『世界の中心で、愛をさけぶ』を撮った人だから、今回の『とんび』も良いドラマになるだろう。と思っていたのだが、ちょいとばかし「やっちまった」感てんこ盛り状態の滑り出し。このドラマに対する僕の不満を羅列する前に、ひとつ触れておかなければならないドラマがある。それは言うまでもなく、このドラマより先、約1年前にNHKが放送した『土曜ドラマスペシャル とんび』です。

nhk_tonbi.jpg
http://www.nhk.or.jp/dodra/dodrasp/index2011.html#d5

原作     重松清
脚本     羽原大介
演出     梶原登城
プロデューサー 鈴木圭
出演     堤真一 ・小泉今日子・池松壮亮・西田尚美・塚地武雅・
       及川いぞう・古田新太・徳井優・平田満・神山繁 ほか

 NHKが放送した『土曜ドラマスペシャル とんび』は、前編と後編が共に73分の短編ドラマ。丁度、映画1本分の時間に相当するが、その内容は近頃の映画を軽く凌駕する出来栄えを見せた秀作で、こちらは『大河ドラマ 龍馬伝』のチームが手がけた作品と呼べる。特筆すべきは、その映像の美しさと空気感。躍動感溢れる俳優陣の演技がドキュメンタリーのように映し出され、観ている者を物語の中に引き込む力を持っている。昭和40年代前半に生まれた僕はこのドラマを観ながら、忘れかけていたあの頃の『臭い』を想い出す感覚さえ覚えた。リアリティ溢れる人間描写と、周到に準備された大道具・小道具の数々。セットを用いずオールロケで制作されたこのドラマには、靴をすり減らせながらロケ地を探し当てた末端のスタッフの情熱さえも感じさせる。写真を撮るのが好きで、映画やドラマを観るのが好きな僕としては、この仕事に携わった人々の苦労と達成感が羨ましくもあり、贅沢て芳醇な時間を味あわせてくれるこのドラマには感服するばかりである。つまり、物凄くイイのだ。

 主演を務めた堤真一さんは、『ALWAYS 三丁目の夕日』の鈴木則文(鈴木オート)役が切っかっけでこの役に抜擢されたと思われるが、僕の好きな『バカの美学』を見事に具現化した名演が光る。その堤さんが演じた市川安男という『限りなく愛おしいバカ男』を支える周囲の人々を演じた脇役達は、誰もが主役を担える演技力と個性を持ち合わせた役者が揃い、作品の重厚さを増しているのがとても贅沢だ。特に、野球少年時代と、大学受験から就職といった時代を演じた今井悠貴君と池松壮亮君の演技力もさることながら、両者の人選と繋ぎ方が素晴らしく、観る者に何の抵抗感も与えない。感情移入したオバちゃんなら「あらアキラ君こんなに立派になっちゃったのねぇ」と言ってしまう程だろう。ヨイトマケな父と素直に成長する一人息子。それを支えた友人達が繰り広げる汗臭い生き様が涙を誘う『NHK版 とんび』は、画面に向かって「バカ!」と微笑みながら言いたくなる名作なのである。

 ところが、『TBS版 とんび』は、ちと違う。主演を務める内野聖陽さんは、けして悪い俳優ではないし、数多くの舞台をこなして来たスタンドプレイヤーだ。しかし、バカ親父のヤスに対して脇を固めるキャラクターが弱く、ヤス一人が浮いた形になってしまっている。優しさと弱さは別のものであるが、その区別が成立していない。そのため、無骨な男の滑稽さを演出する意図が、単に粗野で粗暴な男としか映らない。ヤスが意味もなく同僚を殴る演出は、人によっては不愉快な印象を抱くだろう。海雲和尚を演じる柄本明さんのキャラクター設定も、彼が持つ哲学的なセンスを活かし切れていない。今のところは鳴りを潜めた役作りなのかも知れないが、神山繁さんが演じた役と比較すると重さに欠ける。とくに、ヤスの親友でアロハシャツを着たナマグサ坊主の照雲を演じた古田新太さんに対して、野村宏伸さんのキャラクターは貧弱すぎる。このキャスティングがどんな人格を狙ったのか、功を奏するのかは、今のところ未知数だが、多分失敗するだろう。また、NHKが2時間ちょっとの短編ドラマでコンパクトに纏め上げたのに対し、TBSは初回放送だけで2時間。全編を合わせれば、約5倍の時間を消化しなければならないため、全体的にリズムが悪く、ベタベタしたシーンがダラダラ続くしつこさが鼻を突く。こういった問題は一般的に俳優が悪いと評されるが、役者は単なる兵隊に過ぎない。野球の場合でも、個性豊かな選手達をいかに有効に動かすかが監督の力量を示すように、演出家が頭の中に描いたイメージを何処まで表現出来るのかが勝負の鍵を握るだろう。このままでは、なぜ1年前にNHKが制作したドラマをTBSが敢えてリメイクしたのか、その意図すら掴めない。二番煎じと言われても仕方ない仕上がりだ。

 これらの問題は脚本の出来栄えもさることながら、演出を手がける平川雄一郎さんの『若さ』にあるのかも知れない。それは、時代設定を10年程ずらしたにも拘らず、バーハンドル式のオート三輪を走らせてしまう辺りにも現れている。また、ヤスを取り巻く人々の人間関係も、あの時代の、あの場所にしては、少し都会的過ぎる一面がある。あの頃の団地やアパートなどの低所得者が暮らす街には、時代劇に似た下町長屋の雰囲気が残っていた筈だ。路地裏の縁台で碁(将棋?)を打つ老人達との関係も、「あのバカまたやりやがったなコンチクショウ」といった感じではなく、「また迷惑なトラックが来たよ」みたいな冷たさを感じる。「男は黙ってサッポロビール」みたいな、背中に哀愁が漂う昭和な親父の臭いを知っている人に脚本と演出を任せた方が良かったのかも知れない。

 その他に、『NHK版 とんび』の後編で、課長から所長に昇進した萩本(徳井優)がヤスを呼びつけ東京行きを薦めるシーンがあったが、それを『TBS版 とんび』の第1話で課長(高橋和也)がヤスに長距離運送を勧めた場面と重ねて対比すると、演出家の実力の違いが見えて来る。NHKでは所長が標語を掛け替えながらヤスに話しかけており、大事な部分はソファーに腰掛けじっくり話す流れが作らている。こういった細かい小道具と演出が役者に意味のある動きを与え、その場の状況が生きたシーンを生む。それに対して、TBSでは役者任せな感があり、作り込みが圧倒的に足りない印象を受ける。あのようなやり方をすると、取り付く島も無い俳優は無意味に歩いたりタバコを取り出してくわえたり、ポケットに手を突っ込んだりして芝居を小さくしてしまう事が多くなるのだ。あのシーンは妙に暗く、ヤスに希望を与える話なのか悪い話なのかがハッキリしなかった印象が残っている。また、NHKの所長が墨汁で書いた表題は「負けじ魂」と「全国制覇」で、地方の運送会社には全く関係無さそうな内容が、体育会系な肉体労働者の職場環境をバカバカしく演出する遊び心に満ちていて楽しい。こういった細かいところに演出家の懐の深さが現れているのだ。また、TBSではシーンのテンポが悪く間延びしてしまうのを避けるため、久世光彦さんの『寺内貫太郎一家』や『ムー』にあった樹木希林さんや細川俊之さんが登場する毎度おなじみのコーナーを設け、そこにオリジナルエピソードを挟み込むような手法を取った方が面白く仕立てられたかも知れない。そうする事で、柄本明さんや麻生祐未さんのような二面性を持った役者をフル活用出来た筈だ。そういった冒険が出来なかったのかスポンサーが許さなかったのかは分からないが、今回のリメイクが前作に負けてしまっているのは確かだろう。『NHK版 とんび』は『龍馬伝』で成し得なかった不満の全てをブチ込んでいるかのような勢いがある。『TBS版 とんび』は、この失敗を糧にして貰いたい。期待してるぞ!
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Comments

post
2013-01-26 11:27  少し訂正
通りすがりですが No.5
ドラマとしての企画スタートはTBSのほうが先だったようですよ。
少なくとも3年前から準備が始まっているとのことで、脚本もかなり前に仕上がっています。
2つの放送局がたまたま同じ原作に目をつけたということなのでしょうが、当然どちらの局も原作者の重松さんに了解を得に行っているはずで、なぜ重松さんが両方の局にOKを出したのか、そこが非常に疑問というか、罪作りですよね。

どちらのスタッフもキャストも一生懸命作っているのに、パクリだとか二番煎じだとか、あらぬそしりを受けているのは気の毒でなりませんので、一言書かせていただきました。
2013-01-26 15:49  Re: 少し訂正
Stormsurfrider No.6
コメント有り難う御座います。

『NHK版 とんび』のプロデューサー 鈴木圭 氏が原作に出会ったのは、東北大震災より少し前の事。クランクインは2011年9月26日とされています。対するTBS側では3年程前から構想を練っており、内野さんのスケジュールの都合で1年程ズレが生じているそうですね。しかし、実際のクランクインは昨年10月頃のようで、二番煎じとの批判に対する「あらぬそしり」というアドバンテージは、あまり意味を成さないと思われます。

内野さんの予定で変更がなければ、両者はほぼ同時に撮影と放送が行われたかも知れないので、それはとても残念ですね。仮にもし、そうなっていたとすれば、かなり面白い事になったでしょう。
2013-02-07 17:31  dotirademoiisho
tonbi No.7
NHKがいいだのTBSはマネだの安っぽいだのくだらんこと言いなさるな
NHKも良かったがTBSも別な面白さがあるではないか、TBSのキャスト
だってけっして悪くないよ、回数重ねてみてれば両方とも面白さが分かると
思うな
2013-02-07 19:18  Re: dotirademoiisho
Stormsurfrider No.8
> NHKがいいだのTBSはマネだの安っぽいだのくだらんこと言いなさるな
> NHKも良かったがTBSも別な面白さがあるではないか、TBSのキャスト
> だってけっして悪くないよ、回数重ねてみてれば両方とも面白さが分かると
> 思うな

某掲示板に私のブログがリンクされてる事は察知しております。句点を用いない文体からして、そちら方面からいらした方ではないかと察しております。お言葉ですが、私は「TBSはマネだの安っぽい」等と書いた覚えは御座いませんし、このブログは第2話を観た時点で書いたと冒頭に記しております。「回数重ねてみてれば両方とも面白さが分かる」との御意見が御座いますが、私はもうこのドラマを観ていないのでしょうか?

ドラマ批判を書いた時点で批判を受けるのは覚悟しておりますが、【dotirademoiisho】ならば、敢えてコメントを残すまでも無いと感じます。お名前が【tonbi】になっていますが、おこがましいと思わないのですか?
2013-03-03 21:57 
まろすけ No.9
じつは、私も同じように今回のTBSには相当の違和感を感じていました。
友人たちは面白いと連発していますが・・・。
NHKのはほんとおもしろかったので、友人たちに見せてあげたい!
2013-03-07 22:41  Re: まろすけ さん
Stormsurfrider No.11
コメント有り難う御座います

先にNHK版を観てしまうとねぇ…。
TBS版も頑張ってはいるんでしょうけど、
僕はコテコテの舞台芝居がどーも苦手で。
2013-04-24 14:56  とんび
北のババ No.13
始めてよそ様のブログにコメントします。
私も、先にNHK版を見まして、私の育ったおせっかいぞろいの田舎が懐かしくなりました。
「とんび」のヤスさんを、取り巻く方々がいい方ばかりで、悪意の人がいないことが素晴らしいと思いました。
NHK版の堤真一さんのヤスさんは、無学だけれど愛情豊かな父親役を、演じ切っていました。ああ~こんなお父さんいたな。って。。。。。
内野さんは、最初の方は、張り切り過ぎたのか、浮ついた父親でガッカリしました。
でも見て行くうちに、うまく役に嵌って違和感が有りませんでした。
短編と長編の違いが有りますが、それぞれ楽しませて戴いた、良い作品でした。
今頃になって、投稿なんておかしいのですが、何気なく立ち寄って長い長い両者の比較解説を読ませて頂いて、また、「とんび」が見たくなりました。
勿論NHK版の堤さんがです。
ありがとうございました。
2013-05-25 11:18 
するめいか No.14
全くのよそ者ですが、コメント大変失礼致します。僕はTBS版でこの作品の存在を知ってから、NHK版がかつて同作品を放映されていたことを知りまして、DVDを見ました。
まず、映像と音楽の臨場感は、NHKの方が抜群に良いです!ただ、TBS版は時間をたっぷり持っているのを有利にいかしているように感じました。特に最後の方の、旭の結婚のくだりは、NHK版は駆け足的にバタバタ終わってしまった感がありましたが、TBS版はゆみちゃんとの経緯からヤスさんの猛反対からの照雲和尚の名小芝居(←ここがみどころ!)や健介の存在がとても丁寧に作り込まれていたと思います。
結論的にはどちらも甲乙つけがたい!つまり原作が最高だからです。
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